有機米づくりニュース ひびき 117〜119号
全有連 有機米を食べる会の通信「ひびき」
米作りの現場からの、生産者の様子を細かにお伝えしています。
編集・発行 有機米を食べる会
ひびき No.119(02/01/09)号
冷え込みの厳しい山形です。年末最後の1週間は吹雪の毎日で、青空は結局ほとんど顔を出すことがありませんでした。

新食糧法への移行を振り返って

食管法が新食糧法にかわって、早5年が経過しました。新食糧法の最大の特徴は、米の販売が自由化されたことです。それまで許可制だった米の販売が登録制となり、実質的に誰でも米の売買を行えるようになったわけです。ですから、違法であったいわゆる「ヤミ米」は消滅し、「計画外流通米」として市場流通の一形態として認知されるに至りました。

これは、生産者にとって2つのことを意味していたと思います。

一つは、こだわりの米=有機栽培米・特別栽培米を生産していた農家は、それまで対「消費者」しか販路が許されていなかったものが、対「流通者」という形が認められることにより格段に販路拡大できるようになりました。

もう一つは、政府による規制が外れた(全面的にではありませんが)ことによって、価格の保護がなくなり、価格競争の激化を招くということです。
海外からの安い米の輸入も段階的に解禁されていくことでしょう。価格の安さでは歴然とした差がある国内産の米が、この価格競争の中で生き残れるかどうか、消費者が日本の稲作=米の国内自給の重要性を認め、買い支えていくことができるかどうか?が問われることになります。

全有連の有機稲作農家も、日夜コストダウンに努めています。もちろん安全性・品質・味を犠牲にすることなくです。コストに対する努力は当然必要であり、各生産者とも努力を重ねています。しかし、市場原理の物差しだけでは測れないものが農業であると思うのです。なぜなら、農業は食糧を産み出すものであり、食糧は身体をつくり、健康を維持するために必要です。農業はそういった根本 的な役目を担っていると思うからです。

「もう、稲作だけでは生活していけない」と声が上がるほど米価が年々低下する中、全国の米農家、有機米農家は、複雑な思いでこの新食糧法下の5年間を振り返っています。

地域に密着!酒屋さん、薬屋さんがよきパートナー!

新食糧法がスタートした当初から、全有連では、地域に密着型の自然食品店や酒販店、薬局、牛乳販売店などと提携し、店舗を介しての有機米の販売を進めてきました。提携しているお店は、仙台市を中心に現在50店舗にのぼり、それぞれの地域で全有連の有機米が利用されています。特に薬局では、体質改善に努めている方やアレルギーに悩む方などに利用いただいているとのこと。玄米での利用が多いのも、薬局での特徴です。酒屋さんや、牛乳屋さんでは、「店頭販売よりも、うちは配達が多いね。お酒と一緒に米を配達してね。」(仙台市 佐々木酒店さん)「牛乳は配達が仕事だから、一緒に米も勝手口まで配達すると、お客さんも喜ぶよ」(都内 明治デリカさん)。 新食糧法の持つ「陽」の部分を、最大限に活かし、これらの小売店さんたちと永く提携していきたいと思います。

こうしてより多くの消費者の皆さんに、有機米を知ってもらうこと、食べてもらうこと−それが有機農業・環境保全型農業の発展への、最も堅固な礎なのだと思います。

ひびき No.118(01/12/11)号
今年の冬も田んぼに「ワーコム」

八幡の農業を考える会の斉藤陽一さん(無農薬ヒトメボレ)から、近況報告が入りました。
「今年も、メンバー5人全員、田さワーコムまきましたよ!今年で7年です」この「ワーコム」という資材は、生産者であり研究者でもある栗田幸太郎氏(山形県真室川町)が開発した天然資材です。活性根粒エキス、木炭、キチン他多種の有機物を自家発生酵素で加水分解したものです。
これを土壌に与えることで、土壌改良も含めた土壌生態系の改善に大きな力を発揮します。

「また近いうちに、メンバー全員で栗田さんとこに勉強しにいく予定なんだ。」と斉さん。

自家製堆肥だけでは量にも質にも限界があります。このような多種類の有機物を専門的に堆肥化した資材の存在は、これからの有機農業の大きな支えの一つになるのでしょう。

環境保全型農業=環境に負荷を与えない農業を実践する上で、常にアンテナを張り、より良い有機資材、より良い栽培方法があれば直ちに実践してみることが大切です。
堆肥にしても栽培体系にしても、現場での実践と検証が進歩の原動力です。その意味でもエネルギッシュでチャレンジ精神旺盛な八幡のメンバーの存在は、大きなものです。

秋耕起を終え一段落

大内一男さん(無農薬ササニシキ)の無農薬水田。秋耕起を終えてあらわになった黒土の上を雪がまだらに覆っています。

「雪が降る前にトラクターかけることできて一安心です。雪の後はもう、土が柔らかくなって入れないから」

翌年の雑草抑制に効果のあるこの秋耕起。除草剤に頼る慣行栽培では不要な作業であり、まさに有機農業ならではの作業です。「確かに手間は余計にかかるけども、無農薬栽培をするからには絶対に必要な作業です。慣行栽培なら草や病害虫など症状が現れてから薬で対処できますけど、無農薬では先手先手の作業が、後の労力の節減につながるんです。
というか、今やっておかないと、後で大変な目に遭うよってことなんです。稲作にしても畑作にしても、有機農家はみな、作物ごとの一年のサイクルをしっかりと把握していなくてはなりません。雑草や病害虫から作物を守るためには、先手の対策が必要だからです。

小山田友司さん(全有連生産者連合会会長)が言う「草は見えないうちにとる」。無農薬栽培での心がけを言い得ている言葉です。

空散事業廃止の要請

12/8付の日本農業新聞で、日本有機農業研究会などの団体が、農水省が主導している農薬の空中散布事業を廃止するよう要請したとの記事がありました。これほどまでに有機農業が志向され、JAS法が改正されるほど有機・特別栽培農産物の需要量が増大しているにもかかわらず、それに逆行している空散事業。要請では「農薬の空中散布は、法的根拠のない行政指導で進められているが、住民の健康、周囲の環境、有機農家の経営に重大な悪影響を与えている」としています。
有機・特別栽培農産物を規格づけている改正JAS法においては、周辺の圃場からわずか
でも農薬の飛来があれば、有機・特別栽培として認証できないことになっています。
空散地域では、意識ある生産者が有機栽培を行いたくても、空散のために不可能だという状況を生み出すことになります。周辺住民の健康被害などを考えると、今や空散は利よりも害の方が大きいのです。行政指導として行われている空散事業に対し、改めて一石を投じる必要があります。       

ひびき No.117(01/11/27)号
庄内には白鳥が飛来

春から夏にかけてアイガモたちが活躍し、今は稲株を残すだけとなった八幡地区の池田清一さんの水田。日毎に寒くなり、鳥海山の頂が雪に染まる頃、北方から白鳥たちが渡ってきます。

「うん、ああやって白鳥が落ち穂拾ってるんだ」という池田さんの言葉に促されて田んぼを見ると、一群の白鳥たちが思い思いについばんでいる様子が遠目にうかがえます。
白鳥は冬の使者。彼らの飛来は冬の到来を物語り、人々は季節の巡りを実感します。

「さて・・・白鳥が落ち穂拾って飛んでいったら、トラクターかけるか」来年の雑草対策のための秋耕起は、白鳥が落ち穂を拾ってからにしています。

「庄内の風は強いし冷たいけども、雪降るまでにはまだしばらくある」白鳥たちと共に田んぼも越冬の準備に入ります。

転作大豆、今年は凶作

全有連配送センターから2Hほどの所に、集団転作による広大な大豆畑があります。集団転作とは、本来個々に割り当てられる減反面積を集落・集団単位で集約し、割当面積を一箇所に集中させ、転作作物を作付ける手法です。栽培管理・収穫作業の効率化を図ることができます。
かつては水田だったその土地が、今では見渡す限りの大豆畑になっています。
しかし今年の大豆の出来には、農家が一様に肩を落としています。無農薬大豆を作っているとんとんクラブの梅津善助さん。

「今年は夏が暑すぎた。サヤに豆がほとんど入ってない状態で、粒もいつもより小さいもの」

山形山の大豆も例外なく実入りが悪い結果 となっています。
稲作農家にとっては、減反で収入減の上、転作の大豆も凶作というダブルパンチです。

12月2日、木酢液勉強会を予定

雪深い山形では、稲作農家にとっての冬は充電の時期でもあります。といっても、ビニールハウスでの野菜の通年栽培を行っている農家がほとんどなので、忙しさは一年中です。
よほどの大規模農家でないと、稲作だけでは食べていけないことを実感します。米価は年々下がっているし、高価な大型機械がないと仕事にならないし・・・というのが現実。ましてや手間のかかる有機農業にとって、大規模化は不可能に近いほど困難なもの。買い支えてくださる消費者の皆さんの後ろ盾なくしては成り立ちません。
支援してくださる皆さんに、安全な農作物を、美味しい米をと、全有連農家は日々の実践と勉強を繰り返しています。

そしてこれから迎える冬期間は、春夏秋以上に勉強会・研修会・講習会を全有連では企画しており、新しい知識を蓄える時期と捉えています。その皮切りが、12月2日の木酢液勉強会です。講師は、木酢液研究の第一人者である三枝敏郎氏(農学博士)。日本木酢液研究会の副会長を長く務め、このほど新たに(日本炭窯木酢液協会)を立ち上げました。全有連の顧問も務めていただいており、木酢液についての最新データや、効果的な使用法などを教示してくださっています。
参加対象は稲作農家をはじめ、野菜・果樹すべての農家です。今年も、得るものの大きい勉強会となるでしょう。そして雪解けの春、各々が蓄えた知識が各圃場で実践されるのです。

水田の休養

すっかり晩秋の景色となった水田の片隅に並ぶ大きな白い包み。中には細かく裁断されたワラがぎっしりを詰め込まれています。春になると、野菜畑あるいは果樹畑へと運び出され、雑草抑制の被覆にすきこんで土壌改良にと様々な効果を期して利用されます。冬直前。農家が畑仕事に勤しむ中、水田はゆっくりと休養をとっています。

ひびきの掲載は終了しました


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