稲作だより,  土の声

納豆汁 土の声 2019.01 No.155

▼せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、、、。ここは雪国山形。七草はみな雪の下。そんなことから一月七日の「七草粥」の代わりには「納豆汁」を食べる風習があります。
▼「さむくなっとすんだぁ、昔はなんもながったから、これいれて、納豆いれて、あ~、んまいのよ」と寒河江で大根や里芋を作る武田さんのおばあちゃん。
「これ」とは「芋がら」のこと。芋がらとは里芋の茎を干したもの。納豆汁に芋がらを入れるのが山形風。芋がらのジョグッジョグッという食感がなんとも心地よい。七草粥の具材は、人参、ごぼう、こんにゃく、豆腐、油揚げ、セリ、そして芋がらと七つ。よくすりつぶした納豆と味噌で仕立てる。
▼雪がしんしんと降る日に、納豆と味噌の香りが立ち上がる、アツアツの鍋を食卓にどんと鎮座させ、椀に盛ったら、ふーっとして汁を啜る。とろりとして熱を抱きかかえた濃厚な汁が、体中にじんわりと行き渡る。まさに「んまい」(うまい)。
▼「昔はなんもながった」から、と武田さんは笑っていましたが、納豆汁は、体を温めてくれるだけでなく、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など健康増進につながる栄養成分の塊。しかも消化吸収もよい。長い冬に耐える保存食をいくつも組み合わせて完成した納豆汁。先人たちの生き抜く感性に驚きます。だから、七草粥の日は、無病息災を願って「納豆汁」なのです。