稲作だより,  土の声

この仕組みを次世代に残していいものだろうか。 土の声 2019.05 No.159

▼平成の米作りをデータで振り返ってみようと調べてみた。農水省の統計で平成7年と28年で比較ができた。水田一反歩あたりの労働時間は、38時間から、23時間に(昭和40年は140時間)、収量は、509㎏から544㎏とある。21年間で作業時間を15時間(40%)も短縮し、収量は約半俵(7%)上昇させた。ただし、販売価格は30%以上ダウンしている。
▼実際の姿はどうか?ちょうど今ごろは、畔では野球帽をかぶり、足袋を履いた老人が一定のスピードで歩いている。背中には白い容器をランドセルのように背負い、手にしているのは、杖ではなく、ノズル付きのパイプ。それを左右に振っている。これで畔の草刈りがなくなる。田起こし前には、同じ作業方法で、田圃のなかを歩きながら白くて軽い肥料を撒布する。最近は新しいトラクターがきれいに整地している姿も見かける。これは育苗も田植えも不要のコーティング種子を使った乾田直播という技術。昔ながら?の田植えでも、除草、殺菌、殺虫剤、肥料を同時に散布する機械を自慢気に走らせている。夏になると、ラジコンヘリで濃度の高いネオニコチノイド系の殺虫剤と殺菌剤を振りかける。最後は驚くほど早くなったコンバインで稲刈りを終える。
▼稲以外の植物、多くの生き物、そして目に見えない菌までをも駆逐し、残った薬剤はみな河川に流れ、私たちの口にも入っている。この仕組みを次世代に残していいものだろうか。