稲作だより,  土の声

次世代への贈り物 土の声 2019.06 No.160

▼「除草は、田植後十四~二〇日に蟹爪で行ない、四~五日で打ちなおり、その後十五日、それから十七~十八日後と三回行うべし」(稲作耕種基準・明治三十三年)とある。その除草作業の様子は「土用にかかれば炎天にて上より火を以て焙るが如く、田の水涌返りて咽ぶが如し。稲葉の縁りは鋸刃の如くにて顔と手に疵附きいたみ、蛭にかまれ足は血に染み、水田の中なれば畔ならでは腰を休むべき所もなく、終日腰を打伏しあふぎ惣身日を重ね次第に疲れて苦しむ(粒々辛苦録・1820) と伝えている。
▼現代ではほとんどを除草剤に頼っている。おもに、代掻きと同時に一回、田植えと同時に一回、いずれも耕耘機や田植え機に取り付けられた散布機を利用し、手間はかからない。その作業時間は平均でわずか90分(一反あたり・農林水産省・農業経営統計調査「米生産費 (H26)」)。とはいえ、それなりの費用がかかる(薬剤費は米代金の約1割、農機具代は約2割)。
▼有機農業の現場では技術体系の完成や機具が進歩し、手間や費用はかかっても昔のような重労働は免れている。たとえば「合鴨農法」で雑草を食べてもらう方法や「トロトロ層」を作り雑草の種を沈めて発芽させない方法や「チェーン除草」や「手押し除草機」などを活用している。物理的な除草方法は、人や環境によいだけでなく、薬剤耐性の問題がない点でも優れている。これが次世代への贈り物となる。