稲作だより,  土の声

中山道と力餅 土の声 2021.11 No.189

▼木曾路はすべて山の中である。の書き出しで有名な中山道。全長約百三十九里(約五百四十六km)。長野の福島宿と上松宿の間には「桟や命をからむ蔦葛」と芭蕉翁が詠んだ「木曽の棧」があり、その手前の和田宿から下諏訪宿の間には最大の難所「和田峠」がある。その距離は五里十八丁と最長。その峠を挟んで東餅屋と西餅屋という立場茶屋があった。
▼峠の近くの名物料理には「力餅」が多い。往来が盛んだった江戸時代、この難所を乗り切るためにどんな力餅を食べていたのか?現在も残る東餅屋では、餅で餡を包んだ「力餅」を当時のままとして販売している(和田村史によると暖かい餅に飴をつけていたという記録や西餅屋では「氷餅」(凍み餅)を売っていた記録がある)。その他、草津では餡を使った「姥が餅」、篠原町ではきな粉の「篠原餅」、摺針峠では「あんころ餅」、碓氷峠では餡やきなこをまぶした「力餅」、猿ケ馬場では「柏餅」などが名物となっており、当時の力餅は今と変わらず餅+餡子またはきな粉が主流だということがわかった。腹持ちよく、小豆やきな粉には糖をエネルギーに変えるビタミンも含まれ、峠越えの力になったはず。現代でもマラソン時に補給する餡子もある、、、。で、本題は餡ではなく「餅」。
▼今年は大正時代に新庄で作られていた「永作糯」という幻の餅米をご案内予定。香りがとてもよく、やわらかでよく伸びる餅ができ、お赤飯、おこわ、力餅にすれば香りと艶のよさが際立つ素晴らしい餅米。乞うご期待。