稲作だより,  土の声

人のいない田んぼ 土の声 2017.07 No.136

▼今年も無事に田植えが終了。5月は一年のなかでも一番田圃に人がいるのかもしれません。畔の除草、田起こし、肥料撒布、代かき、田植えと作業が続くため。とはいっても、ほとんどは機械を使った作業で、人が腰をかがめる姿は少ない。唯一、田植えが終わったあとに欠株部分に手で植える「補植」作業があり、その姿にほっとしつつも、田植え機の機能向上か、これも少なくなったように思う。
▼それ以降は、田圃ではほとんど人はみかけない(有機農業では田植え後の除草や管理作業が欠かせず、田んぼに足重と通うことになる。だから有機農業をしている水稲農家はすぐにわかる)。それだけ稲作の機械化・効率化が進んだ証拠。重労働であった部分は機械が行い、やっかいだった除草には、除草剤があり、しかも田植えと同時に散布される。病害虫防除は、ラジコンヘリにおまかせとなる。こんな進化しつくしたような農業も、昭和35年と比較した規模拡大率は、たった1.9倍(野菜は7.9倍、養豚は600倍近く)。これは、意外と機械のせいかもしれない。「機械が壊れたら引退だな」と米価下落以降よく耳にするこの言葉。
▼その農機具は、人間の複雑な動きを再現し、馬力を要するするものだけに壊れやすい。熊谷さんのところでは、20年来使い続けてきた田植え機がついに故障。田植え直前、田植えピーク時、貸し手も中古もなく、思い切って購入することになった。痛い出費となったが、ここに熊谷氏の想いを感じる。この田植え機の寿命より長く、生涯現役でいつまでも米作りに打ち込んでもらいたい。