稲作だより,  土の声

殺菌は耐性のできない温水で 土の声 208.04 No.146

▼米作りの第一段階「塩水選」で種籾の選別をすると種籾の殺菌に移ります。種籾に「イネばか苗病」「いもち病」「苗立枯病」などの病原菌がついているからです。その殺菌方法として私たちは農薬を使用せず「温湯消毒」を採用しています。種籾を「60℃のお湯に10分間または58℃で15分間」で殺菌する方法です。ただし、水温とその量、種籾の温度とその量をしっかり見極めないと失敗することもあります。
▼「うちはボイラーがあるから、水温が下がってもすぐに温度を上げられる、だから失敗がないんだよ」と酒田の斎藤さん。「うちはお風呂を使っていて、コツをつかんだ」と登米の佐藤さん。その一方、手間を惜しんだり、失敗を恐れて農薬で殺菌している生産者も多い。「最近、農薬を使ってもバカ苗が出ている。耐性菌が出るから毎年農薬も変わっていて、そろそろ使えるのがなくなるんじゃないか」と斎藤さん。遺伝子組換えにより除草剤耐性+殺虫成分入りの作物を作っても雑草や昆虫は耐性が生じています。この先はどんな抗生剤も効かない耐性菌MRSAのようなものが発生する心配があり、自然を殺菌剤や殺虫剤で押さえつける脆さに対して自然を活かした有機農業の骨太さを感じます。
▼家庭でも同じです。食中毒菌や雑菌は、薬剤、洗剤を使用しなくとも75度1分の加熱で殺菌できます(ノロウイルスは85度)。この知識と技術はセットです。水温と対象物の温度の関係、芯温が75度に達しているか。これを守れば家庭でも薬剤が減ります。