稲作だより,  土の声

田んぼと水 土の声 2016.08 No.126

▼私たちが食べているお米は水稲。水稲とは水田で作る稲のこと。水をたくさん使って作られます。今は、中干しを終えて、潅水と落水を繰り返す「間断灌漑」をしている最中。このあと、出穂から花が咲く時期には、たくさんの水を必要とするので「花水」とよばれる湛水もします。とにかく水をたくさん使うのです。
▼その水は常に水路に流しているのではなく、水の管理組合によって、必要なときにだけ計画的に水が流れる仕組みとなっています。山形はちょうど中干し後の水を入れるタイミング。「暑くなる前に水が入ってよかった」と熊谷さん。田圃の畦に数分立っているだけで直射日光で背中はじりじりとして汗が出るほど暑いのですが、田んぼに水があるので、地温が高くなりすぎることを防げたのです。高温とは逆に低温障害をもたらす「やませ」が心配なときでも、田んぼに水をを入れておくことで低温から守ることもできるのです。水で温度管理をしています。
▼また、水田は、多面的な機能があることが知られています。水田にためられた水は、ダム機能となっていたり、土中に染みこんだ水が地下水の源となっていたり、そこに生きものが生息し、赤とんぼや蛙、メダカやドジョウ、水鳥など日本の原風景が情緒を育んできました。
▼これからは出穂時期。梅雨明けして本格的な夏が訪れる時期。「水」を使いこなすことで、素晴らしい稔りの秋がやってきます。
▼最後に、田圃にはいったい、どのくらいの水を入れているのか興味が沸きました。米穀安定供給確保支援機構によると、なんと10aあたりに2000~3300t。お茶碗一杯分のお米だけでも、最大で450ℓ、1升瓶で250本です。