稲作だより,  土の声

異常気象のなかで進化する 土の声 2020.01 No.167

▼元号「令和」になり、はじめての新年。少しの雪は降りながらも山形では珍しい「雪のない正月」だった。自然災害の多発はもとより、生活のなかで「ちょっとおかしいな」と微妙な違いを感じることも多くなった。過去の経験値が通用せず、乱高下のある異常気象時代だ。
▼畔では、冬を前にオオイヌノフグリなどの春の草花はすでに根を張り、春の陽射しを受ける葉を整えたうえで積雪を待ち、雪のなかで静かに越冬するはずだった。暖冬で雪がなければ天から降り注ぐ冷たい空気をまともに受ける。大寒波がやってくれば地上部の葉は凍ってしまう。雑草たちは、大異変にも負けずと、最後の最後まで適応能力を発揮させていくはず。その姿も見ていきたい。
▼今後、暖冬で雪が降らないかというとそうでもない。気象庁にはこんなデータがある。過去百年の日本近海の海域平均海面水温(年平均)の上昇率は+1.12℃(気温の上昇率は+1.21℃)。しかも「日本海中部」は+1.70℃と一番高い。さらに冬季に絞ると+2.28℃と全国平均よりも0.83℃も高い。冬の海水温が高いことで、大寒波襲来時には温度差から入道雲のように雪雲が発生し「ドカ雪」となる。日本海寒帯気団収束帯を通れば西日本にも大雪を降らせる。これが暖冬の落とし穴。
▼温暖化により新潟コシヒカリの一等米はわずか2割。新潟から学びつつ、まずは雪に備え、異常気象対策の知恵を出し合い、猛暑、干ばつ、冷夏、日照不足、長雨、豪雨にも耐えうる田畑の機能を高め、大地に力強く根を張る稲を育て、進化することを目標に掲げたい。