稲作だより,  土の声

香の物の副作用 土の声 2021.02 No.180

▼「香の物」があるだけでご飯がぐっと進む。しかもそれはうまい。
香の物とは、茶懐石料理の「聞香」の際、臭覚がにぶったときに、沢庵を口にして臭覚を戻すために使われたことからこの名がついたとある。「香りのよい物」ではなかったが、香の物には塩が引き出した野菜の爽やかな香りや、発酵により醸し出された、ふわっとした香りと酸を感じるすっきりとした香りがあり、昆布や唐辛子、陳皮や柚子が加われば奥行きのあるカラフルな香りを放つ。これをご飯と一緒に噛み進めたときの、鼻腔を通り抜ける香りは心を癒してくれる。手づくりであれば、それをより強く感じとれる。
▼大根や白菜をちょっと余らせてしまうなら迷わず香の物にするのがおすすめ。嵩がぐっと少なくなるうえに保存性は高まり、保存しているうちに発酵し、味わいを深め、栄養価を高めてくれる。
少量なら気軽にできる。野菜は日干しなどせずに軽く塩を当てて水を出し、ギュッと絞ればよいし、重石不要の小型漬物容器もあるし、浅漬けならジッパー付きの保存袋を使って冷蔵庫に入れるだけ(ミンさんのキムチの素も美味)。簡単な漬け物でも時間が経てば乳酸発酵してくれる。
▼浅漬けなら塩は1%、発酵も楽しむなら2%。塩気が強ければ、食べる前によく絞ればよいし、刻んで納豆に加えれば超健康食品に。迫力のある厚切りもいいし、薄くしてみたり、細かく刻んでみたり、これだけでもさまざまな味わいとなり口飽きしない。副作用は免疫力増進なのだからうれしい。