稲作だより,  土の声

鴨と一緒にうまい米づくり 土の声 2020.07 No.17

▼6月5日、快晴。山形県酒田の堀さんの田圃に鴨が放たれました。田圃は一枚ずつぐるりと防鳥ネットで囲み、鴨の寝床を作り、カラス除けのテグスを細かく張り巡らせます。そこに入るのは、生まれてから2週間ほどの鴨。田圃に放すとすぐに泳ぎ出します。2時間前までは、生まれてから一度も水浴びをしたことがありません。毎年ながらその本能には驚かされます。泳ぎながら水中を攪拌し、雑草や虫を食べてくれます。
▼合鴨農法は、85年に富山県南西部福野町の荒田清耕氏が実践し、それが新聞やテレビで報道され全国に有名になりました。その後、福岡の古野隆雄氏が天敵除けの電柵などの改善をし普及がはじまった農法です。私たちも「合鴨農法」と呼んでいますが「合鴨」ではなく「真鴨」を利用しています。合鴨に比べて野生に近いため警戒心が強く運動量が多いことから、東北の合鴨農法は真鴨が主流となっています。
▼これを支えてくれているのが山形県最上地方で真鴨の生産販売を行う山形第一農場の庄司さん。本来はフランス料理など高級料理店向けに生産を行っていますが、有機農家たちの要請を受けてヒナの貸し出しがはじまりました。手探り状態だった合鴨農法も庄司さんのところに農法の情報が集まり、それが拡散され、これを繰り返すことで洗練された農法となっています。 田圃に入れた鴨は、一カ月ほど除草を手伝ってくれたのちに、庄司さんに引き取られて大事に育てられます。今年も鴨と一緒にうまい米づくりを目指します。