8月 AUGUST:葉月(はづき)
季節の言葉
●炎天(えんてん)真夏の太陽がギラギラと照りつける大空のこと。直射日光が焼け付く感じでいたたまれない感じ。歩く人も途絶えて静かさを感じさせることも。1日中でもっとも暑いころは日盛り。鈍よりと曇った風もなく暑くて汗がにじみでる不快指数が高い日中は油照りともいいます。
●立秋(りっしゅう)8月8日は二十四節気の一つ、立秋に当たります。まだまだ暑い盛りですが、暦の上ではこの日から初めて秋の気配が現れてきます。日中は猛暑でも朝晩の涼しさや鈴虫やひぐらしの声が聞こえ始めてくると、確実に秋の気配を感じ始めます。
●残暑(ざんしょ)立秋になってからの暑さを残暑と言います。また、この日から暑中見舞も残暑見舞に変わります。この頃になると真夏の暑さも炎天下での灼けつくような日差しになり、午後の人通りもぱったりと途絶えるほどです。秋風の立つお盆過ぎまでこの暑さが続きます。
●百物語(ひゃくものがたり)夏の夜の暑さをしのぐのが怪談話。その怪談の話を始まる前に夕刻から百の灯りをともし、話が終わるごとに灯りを一つ一つと消していき、ちょうどうしみつ時の午前2時過ぎに百の話が終わると妖怪が現れると信じられた怪談会です。落語でも夏の定番のように語られた話ですが、実行するにはちょっと勇気がいります。
●打ち水(うちみず)炎天下の日には涼を求めて門前や庭、路上などに夕方には水まきをします。水がまかれた後を渡る風に清涼感を求めました。また、路上や草木の濡れる姿には見た目での涼しさを感じさせます。
●水中花(すいちゅうか)水の入ったコップに入れると花のように開きます。木などを薄く削って彩色したもので、夜店や雑貨屋などで販売されていました。今ではほとんど見られなくなりましたが、インターネットで通販している業者もおり、まだまだ人気があります。江戸時代から酒席で杯などに浮かべる酒中花という水中花もありました。
●風鈴(ふうりん)小さい釣り鐘のスズ。中国から伝来して、大衆化しました。軒先などに吊るして風に吹かれて鳴る音色を楽しみながら涼を感じさせます。昔の東京では風鈴売りの姿は、まさに夏の風物詩そのもの。今でも3年ぐらい前には歌舞伎町あたりでも大きな枠にたくさんの風鈴を付けて、売り歩く人がいました。お盆近くになると東京から移動して札幌で売るそうです。
◆冷やし中華(ひやしちゅうか)この季節にはラーメンに代わって登場するのが冷やし中華。これは「冷やし中華そば」の略で日本で考案されたものです。ルーツは昭和12年に仙台市内の中華料理店組合がつくったものだといわれます。
●お盆8月が来るとやはり大事な日がお盆。終戦記念日と重なり、人々は祖先を供養します。このお盆の時期は旧暦7月13日〜16日に行いましたが、今では新暦を採用してからもそのままの7月と月遅れの8月に行う地域に分かれています。正式には「盂蘭盆(うらぼん)」といい、古代のインド語の一つであるサンスクリット語の「ウラバンナ」を漢字にあてはめた言葉です。仏壇に供えるキュウリの馬は、これに乗って早くこの世にもどり、ナスの牛に乗ってゆっくりと戻ってほしいという願いが込められています。また、あの世に帰る祖先を送るのが送り火。京都の大文字送り火が代表的ですが、盆踊りや精霊流しなども同じように送る行事の一つです。
●送火(おくりび)盂蘭盆会の精霊を迎える迎火の逆に最終日に送り出すのが送火。京都での8月16日に行われる送火が有名です。この日は東山如意ヶ嶽の「大文字」が有名ですが、他にも「妙法」、「船形」、「左大文字」、「鳥居形」の五山に火が点じられ30分ほど市内から見渡すことができます。
◆盆踊(ぼんおどり)お盆になると、町中にやぐらが組まれて盆踊が始まります。これは盆に招かれた精霊を慰めて、送り出す踊りとして考えられ、また無縁仏の霊も追払います。ですが今では郷土の祭りとして阿波踊りのように全国的にも知られた観光用の祭りにもなってしまいました。
●涼風(すずかぜ)』晩夏に吹く心地よい風。ひそやかに秋の訪れを告げます。この頃になると日本を覆っていた太平洋高気圧も後退し、夏の終わりを感じる頃です。
●土用波(どようなみ) 海の巨大波は「うねり」から始まります。このうねりの代表的な波が「土用波」。毎年、土用の時期の7月20日から8月7日頃になると1千キロも離れたフィリピン近海に発生した台風の暴風が波浪になりうねりがそのまま日本の海岸までに届き土用波となります。また、その時に届いたうねりが岩や岩壁で白く波を上げて砕けると、発生するのが海鳴りです。土用波が届く頃になると海水浴を控えたり、晴天でも遊泳禁止になるなど、波に警戒しました。別名「台風から届く最初の手紙」とも言われるうねりと海鳴りが、日増しに強くなると台風が日本近海に近づいていると悟りました。この時期に海に風がなく穏やかになることを「土用凪(どようなぎ)」といいます。
●処暑(しょしょ)8月の23日は二十四節気のひとつ、処暑に当たります。夏の蒸し暑さが峠を越し、後退しはじめ暑さが収まる頃の意味合いです。昼間はまだまだ暑い日が続きますが、朝晩は確実に涼しくなってきます。また、草むらの虫たちも鳴き始め、夕方にはヒグラシの声も聞こえ、確実に秋の気配が感じられてきます。
●夏の果て(なつのはて)過ぎ去っていく夏の哀惜の念が込められている言葉です。同様の季語としては「夏終る」「暮の夏」「夏惜しむ」「夏の別れ」などがあります。夏は祭りなどにお盆休みでの帰省、夏休みなど行事が多く思い出の多い季節。暑さの盛りが過ぎて行く夏を惜しむ気持ちは、子供の頃から感じるものです。
●『季節の生き物 コーロギ』お盆が過ぎる頃に鳴き始めるのがコオロギ。人里近くに住み、一番多く聞こえます。日本人は古くから虫の声に美を感じ、耳をそば立ててきました。江戸時代には縁日で虫かごに入れて売られ、音色を楽しんだそうです。真夏ではコオロギは昼間が暑いので夜に鳴きますが、秋になると昼も夜も鳴き、晩秋になると気温が下がるので夜は鳴かなくなりかろうじて昼間だけになります。この鳴き声はオスがメスに対する求愛の鳴き声であり、まさに鳴き続ける姿は情熱的です。意外ですが虫の鳴き声は、欧米人には雑音に聞こえると言います。日本人に生れてきたからこそ虫たちの声の競演を楽しんでみませんか。
8月のキーワード
【自然】 天の川、立秋、流星、不知火、土用波、油照り、積乱雲、早冷、入道雲、処暑、赤潮、驟雨、雷
【暮らし】 蚊・ゴキブリの退治、暑中見舞の整理、残暑見舞状、ふとんの手入れ、住所の訂正、秋じたく、新学期の準備、主婦の夏休み、台風シーズンに備えて雨具の手入れ、アクセサリーの手入れ
【健康】 食中毒、日本脳炎、皮膚病(水虫・たむし・あせも・とびひ)、日射病、熱射病、日光浴、夏カゼ、寝冷え、冷房病、夏バテ対策、低血圧、日焼け対策、ジョギング
【花】 きょうちくとう、さるすべり、すすき、あさがお、おみなえし、はぎ、くず、へちま、もろこし、つゆくさ、ほうせんか、まつばぼたん、グラジオラス、カンナ
【園芸】 種蒔き、真夏のバラの手入れ、庭木の台風対策、さし木、株分け、水やり、鉢花・洋蘭・観葉植物の日照と施肥、増し土、キクの手入れ、家庭菜園
【季語 立秋、残暑、新涼、星月夜、天の川、初嵐、稲妻、芙蓉、朝顔、稲の花、つくつく法師
【誕生石】 ペリドット(幸福、和合)
【誕生花】 朝顔(明日もさわやか)、露草(尊敬)、千日草(普遍の愛)
【時候の挨拶】晩夏、暮夏、残暑、初秋、秋暑、立秋、夏草、朝顔、蝉しぐれ虫の音、ひまわり、雲の峰、線香花火
8月の旬【魚】
【かます】旬は晩夏から秋で、塩焼きが最高の味である。天ぷら、フライにも向くが、一夜干し、あるいは数日干したものは、水分がなくなり、肉の中のタンパク質に弾力性が増し、美味である。
【鶏魚(いさき)】たかべと共に夏を代表する魚。伊豆から房州にかけてよくとれる。大型ほど脂がのり、おいしく、刺身か塩焼きにするのが旨い。洗い、煮付け、バター焼きなどもよい。
【太刀魚(たちうお)】脂ののってくる秋にかけてが旬。名前からもわかるようにその姿は太刀そのもの。関西方面では夏の魚として珍重される。
【蛸(たこ)】旬は夏から秋にかけて。地域によって冬ダコと呼ばれ、冬が旬となるものもある。煮物を作るときは、とろ火でことことと差し水をしながら長時間煮込み、柔らかくなってから味を整える。塩や砂糖をはじめから入れすぎると、かたくなるので注意する。
【高部(たかべ)】初夏から盛夏が旬で、脂が一番のっている。身がやわらかで、焼き魚のさっぱりした味にはファンが多い。煮付けたり、蒸してもおいしい。伊豆七島のものが絶品。
8月の旬【野菜】
【トマト】7月〜8月に出回る路地ものは味も濃く、自然の香りがあっておいしい。ただし、完熟トマトは痛みやすいので注意する。ビタミンAを多く含み、生で食べればビタミンCも豊富。特に路地ものがハウス栽培ものの3倍も含んでいる。また、トマトの酸味や香りは肉類の油のしつこさや臭みを和らげてくれるので、一緒に料理するとよい。
【茗荷(みょうが)】夏ミョウガは6月〜7月、秋ミョウガは8月〜10月が旬。独特の芳香と風味がある。刻んで水にさらし、麺類や味噌汁の薬味にすれば、シャキっとした歯ざわりでおいしい。
【なす】1年中出ているが、出荷量が多く、味がよいのは6月〜10月。ナス自体にはとりたてて栄養がないが、油をよく吸収する特性を持ち、その上、油と相性がよく脂っこくならない。そのため植物油と一緒に調理すると、リノール酸やビタミンEをたっぷりとることができる。
【蒜(にんにく)】香辛料として1年中使われるが、7月〜9月に新物が出る。醤油に漬けておくと香りがやわらぎ、醤油も香りが付いて調理に使える。疲労回復などに効果的だが、毎日とる人は1日1粒以内にとどめた方がよいとされる。
【冬瓜(とうがん)】旬は夏。水気が多く、淡白な味が特徴で、あんかけ、肉詰め料理や中国料理には欠かせない。利尿、便通、水腫などに効能があるといわれている。10度前後のところで長く貯蔵でき、日かげで風通しのよいところに置いておけば、冬まで保存できる。
【干瓢(かんぴょう)】カンピョウは夕顔の果肉を切って竿にかけ、さらしながら乾燥させたもの。炭水化物、タンパク質、脂肪、無機質を含んでおり、利尿作用、解毒作用があるといわれている。調理は、ぬるま湯につけて戻し、出し汁で煮込んで、柔らかくなったところで味付ける。
8月の旬【果物】
【ぶどう】巨峰は8月〜9月にかけて甘みも増しておいしくなる。デラウェアは比較的早い時期から出回る。品種によって糖と酸の割合は異なってくるが、ブドウ糖や果糖などを多く含んでいるため甘みが強く、疲労回復に効果がある。
【梨】日本梨は盛夏から出回り、新水、幸水、豊水、長十郎、二十世紀、新高と品種を変えて翌年1月頃まで出回る。最近では、甘みの強さと果汁の多さで長十郎をしのぐ、三水といわれる幸水、新水、豊水の人気が高い。西洋梨では、ラ・フランスが最もおいしいといわれている。
【無花果(いちじく)】夏果は6月〜7月、秋果は8月〜10月に出回る。イチジクは薬用効果として整腸作用、血圧降下、健胃、滋養、消化促進などの効き目があり、二日酔いにも効果的。 |
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