9月 SEPTEMBER:長月(ながつき)
季節の言葉
●二百十日(にひゃくとおか)9月1日は立春から数えて二百十日目に当たります。この時期になると台風の厄日として昔から知られています。それまで太平洋の海上を抜けて行った台風が、日本本土に接近してきます。ちょうどこの頃は稲の花の盛りで、農家では風祭りを行なったりしました。台風は数としては8月が多いですが、9月の台風は上陸して大きな被害を残しています。
●白露(はくろ)9月7日は二十四節気のひとつの白露に当たります。立秋から30日目で秋も進み、この頃は大気も冷えて朝晩には野の草には露が宿るようになります。高原の草むらを歩けばズボンを濡らすほどの露を見ることもでき、大気が涼しく感じます。朝露は日が昇れば自然と消えてしまいます。
◆二百二十日(にひゃくはつか)9月11日は立春から数えて二百二十日目に当たります。この日は台風が来る第二の厄日とされていて、実際に過去の台風を調べてみると9月中旬頃からの方が被害が大きいです。
●あきのこえ)類似語に『秋の音』や『秋声(しゅうせい)』もあります。秋になると気温も下がり、空気も澄んで、日常の物音が夏よりもいっそうよく聞こえてきます。ですが過ぎ去る季節のもの寂しさや詩情、情緒を感じさせる音です。鳥や虫の鳴き声など、秋ならではの声は夜遅くまで響きます。
◆爽秋(そうしゅう)秋になって空気が澄んできて、気候がさわやかになってくることです。音も高く澄んで、はっきりと聞こえるなど秋らしいくなってきます。
◆ 秋天(しゆうてん)秋の空のことをいいます。秋の空は春のかすんだ空とは違い空気が乾いていて透明感があります。山並みの輪郭も見え風景もハッキリとしてきます。ですが、「女心と秋の空」といわれるように天候の変わりやすい季節でもあります。
●秋彼岸(あきひがん)「暑さ寒さも彼岸まで」とも言われ春と秋には彼岸の時期があります。単に彼岸と言えば春の彼岸を言い、秋の彼岸は「秋彼岸」とか「後(のち)の彼岸」と表現します。秋彼岸は秋分の日(9月23日)をはさんで7日間。彼岸入りが今月の20日で彼岸明けが26日になっています。この時期には亡くなった人の法要やお墓参りなどを行なって祖先を供養します。また秋分の日は、「お彼岸の中日」で「祖先をうやまい、亡くなった人をしのぶ日」として国民の祝日ができました。8月のお盆に田舎に帰ってお墓参りができなかった人は、この時期を利用するといいかもしれません。
●秋雨前線(あきさめぜんせん)9月の中旬頃から10月中旬頃にかけて、日本の南岸沿いに停滞し、秋の長雨をもたらす前線。南東に後退していく夏の高気圧と北西から広がってくる大陸の高気圧がぶつかり、その温度差から前線ができます。また、このころのしとしと降り続く長雨を「秋霖(しゅうりん)」といいます。この長雨も通常は10月上旬から中旬に明けて、梅雨明けならぬ秋霖明けになり秋晴れが続きます。
●月見(つきみ)旧暦の8月15日(新暦では9月ごろ(は「十五夜」です。1年のうちでもこの夜が最も空気が澄んで明るい仲秋の満月になります。お月見は、もともと中国で生まれ「三五夜(さんごや)」といい、天人が降りてくるとされていました。日本へは平安時代に伝えられ、十五夜の名月や十三夜の後の月を月見をしました。お供えには団子や柿、枝豆、芋、栗、ススキなどの秋草などを縁側に用意して楽しみます。この日が晴れれば名月ですが雲で月が隠れたら「無月(むげつ)」。雨が降ったら「雨月(うげつ)」といいます。
●秋分(しゅうぶん)9月23日は二十四節気のひとつの 秋分に当たります。 この日は春分の日と同様に昼と夜の時間が同じようになり、太陽も真東から昇って真西に沈みます。さらに翌日からは昼が短くなり夜の方が長くなります。「暑さ寒さも彼岸まで」と言う言葉があるように、この時期を境にして暑さも遠のいていきます。
●秋気(しゅうき)秋になって空気が澄んでくると秋の気配を大気から肌に感じ取れるようになります。この季節のさわやかな澄み切った空気などを総称して、こう呼んでいます。この言葉は漢詩にもよく使われています。野外で感じる秋らしい雰囲気がそのままこの言葉となっています。
●ススキ秋の七草のひとつでもあるススキは、穂の動きが風の通り道に見えることから短歌などでは乱草(みだれぐさ)、袖振草(そでふりぐさ)などの名で詠まれています。茎の先に黄褐色の花穂を付け、獣の尾の形に似ていることから「尾花(おばな)」とも呼ばれます。日本各地の山野に生え、かやぶき屋根の屋根材としても昔から利用され、また、炭俵を作り、家畜の飼料にも使われて日本人の生活に大切な植物ですが、あまり知られてはいませんが、古来から農耕儀礼にも多く使われてきました。魔除を払う力があると信じられおり、豊作祈願などに稲と似ていることから穂を立てて供えられました。また、十五夜のお月見に飾る習慣もありますが、その名残とも言われています。神奈川県の箱根仙石原では、早くも晩夏の陽光を受けて穂先が輝き始めています。
●秋水(しゅうすい)「秋の水」ともいいます。水温が下がり、澄み切った水のことをさします。秋になると海、川、湖などに透明感が漂います。また、「三尺の秋水」のように研ぎ澄まして、よく切れる刀剣のたとえにも秋水を使います。
●秋冷(しゅうれい)秋のひんやりした気候をいいます。この頃になると朝晩が涼を感じ、夏の暑さが去り、心地よい冷えを感じ始めます。
●野分(のわき)昔は秋の始めに吹く暴風を台風と呼ばずに野分と言っていました。また、秋から冬にかけて吹く強い風もいいます。野の草を分けて吹き通る風の意味です。当時は台風を突風と思っていました。ですから過去った後の晴れ間は野分晴れとも言っていました。
9月のキーワード
【自然】 台風、白露、秋分、秋霖、秋雨前線、天の川、仲秋の名月、十三夜、十五夜、十六夜、待宵草、鰯雲、鯖雲、雨月、虫の音、鈴虫、長月、菊咲月、玄月、寝覚月、立待月、居待月、寝待月、更待月
【暮らし】墓参り、秋の彼岸、敬老の日、月見、重陽(菊見)、クーラー・扇風機の手入れ、夏靴・日傘の手入れ、レジャー用品の後始末、アルバム整理、すだれの片付け、秋の夜長の利用法、秋の衣替え毛糸の編物開始、照明器具の点検、防災準備
【健康】 夏バテの回復、衣服・寝具の手入れ、台風・水害と消毒、髪の毛・日焼けの手入れ、食中毒、日本脳炎、かぜ
【花】 秋の七草(萩、ふじばかま、桔梗、おみなえし、なでしこ、すすき、くず)、コスモス、よもぎ、ほうせんか、うど、彼岸花、サルビア、ハゲイトウ、菊、ダリア、アザミ、マリーゴールド、リンドウ
【園芸】 夏草の種・球根の保存、宿根草の植え替え、バラのせんてい、秋のうちに花を咲かせる、秋植え球根(薬用サフラン、コルチカム、秋咲きクロッカス)、家庭菜園(クレソン、二十日大根)、種蒔き(忘れな草、サルビア、ケイトウ、マリーゴールド、秋咲きコスモス)
【季語】 仲秋、夜長、露、鰯雲、爽か、冷やか、花野、秋の海、水澄む、秋の水、秋草、萩、鶏頭花、コスモス、曼珠沙華
【誕生石】 ブルー・サファイア(慈愛、徳)
【誕生花】 なでしこ(貞節)、ケイトウ(色あせぬ恋)、カンナ(誘惑)二百十日、良夜、台風、野分、朝寒、名月
【時候の挨拶】新秋、初秋、秋冷、新涼、秋意、秋色、秋気、涼風、清涼、二百十日、良夜、台風、野分、朝寒、名月
9月の旬【魚】
【鮎】アユは初秋になると海へ下りながら川底に産卵する。この時期のものを落アユ、錆アユと呼ぶ。骨や皮がかたくなって脂肪も減るが、腹に卵があり、肉にはコクが出るので、魚田やフライ、煮浸しなどによい。【帆立貝】殻つきの活きのものは一般に10月〜12月が旬。帆立貝の貝柱は高タンパク、低カロリーの健康食品といえる。買う時は貝殻のしっかりしたものを選ぶとよい。
【新子】東京湾で9月から獲れ始めるコハダの幼魚をシンコという。体長はせいぜい3〜6センチで、頭をとって開き、中骨も除いて酢でしめれば、そのまま一貫漬けの握りずしになる。
【鮭・マス】おいしいのは、9月〜11月。サケにはタンパク質や脂質が多く含まれ、ビタミンB1やナイアシンも多い。焼き物からフライ、鍋物、かす汁など広範囲に利用できる。マスと鮭は混用されることが多いが、日本では陸封型の鮭をマスと呼ぶ。ニジマスなどのマス類は塩焼きやフライ、ムニエルなどに向く。
【秋刀魚(さんま)】旬は秋。大形で口先や尾の付け根が黄色いものがよい。ビタミンA、ビタミンB12が豊富。血合肉に多く含まれる。ビタミンB12は他の魚の3倍と多く、貧血に効果がある。ビタミンAは、皮膚や粘膜を丈夫にする。サンマの塩焼きには、大根おろしと醤油がおいしいが、レモンやすだちの絞り汁をかけると、生臭さが消え、味も一段と引き立つ。
【さわら】旬は回遊する地域によって異なり、東京あたりでは1月〜2月の寒中を旬とする。普通魚は頭に近いほうがおいしいが、サワラに限っては尾に近い方がおいしい。タンパク質、脂質、ナイアシン(ビタミン)に富んだ栄養価の高い魚。
【鯖(さば)】旬は秋、秋サバはコサバのことである。コサバは年中味は大して変わらないので、この時期はマサバを味わいたい。血合肉には鉄やビタミンBがたっぷり含まれ、栄養価が高い。成人病を予防するEPA(エイコサペンタエン酸)を多く含む。
【鰯(いわし)類】マイワシは秋から冬、ウルメイワシ、カタクチイワシは冬が旬といわれる。高度不飽和脂肪酸のEPAとDHA(ドコサヘキサエン酸)の働きで血液の動きをよくし、コレステロールを排除するので成人病の予防にも効果がある。
【甘鯛(あまだい)】旬は秋から春。白アマダイ、赤アマダイ、黄アマダイに分けられ、味覚は白が一番で、赤、黄の順。京都ではグジと呼び、若狭湾で獲れたアマダイに一塩をあてて身を締めたものが最高に美味とされる。また、白アマダイを干したのが静岡県の興信ダイで、これもおいしい。白アマダイは脂がのり、上品な味が好まれ、調理法も幅広い。興信ダイは高級魚に入る。
9月の旬【野菜】
【人参】三寸・五寸ニンジンは夏、日本ニンジンは秋が旬。緑黄色野菜の代表選手といえ、カロチン・ビタミンAを多く含み、貧血や疲れやすい人の体力増強に効果がある。調理法では、体内にビタミンAの効力になるカロチンの有効度は生だと1割程度だが、煮れば3割、油で調理すると5〜6割となり、油と一緒に食べるのがよい。また、ビタミンCを破壊する酵素を持つので、ビタミンCを持つ大根などの野菜と一緒に調理する時は、酢かレモン汁を加え、早目に食べると損失が少なくてすむ。
【芋茎(ずいき)】里芋の茎、葉がらをズイキという。ザクザクした歯ごたえに人気が高い。近畿方面では干したものを割菜といい、熱湯でもどしてから使う。旬は9月頃。大半が水分だが、産後の体力回復に効くという。サッと茹でて、胡麻酢、くるみ酢などで和えて食べる。
【しめじ】香り松茸、味シメジといわれるように味のよいキノコである。しかし、市販されている人工栽培のシメジは、栽培平茸の場合が多い。かさが壊れやすいので、加熱調理する時は中火以下の火力で。
【里芋】1年中出回っているが、8月〜9月が旬。生のズイキの旬は9月。5〜6時間以上水に漬けたものは、芽の表面がかたくなり、柔らかくなりにくいので注意する。里芋のぬめりには体内に入ると解毒作用を持つ栄養素が含まれ、胃壁や腸壁の潰瘍を防止し、内臓を強化するほか、老化防止作用を持つ唾液線ホルモンの分泌を促す効果がある。
【初茸】他のキノコに先駆けて里に近い松林などにできる。直径5〜6センチのかさの中央にくぼみ、上向きに開いたように見える。シメジに次いで味がよく、吸い物、炊きこみ御飯、煮物などに好適。
【蓮根】レンコンは蓮の地下茎で、8月下旬〜9月にかけてが収穫の最盛期。レンコンの切り口がすぐに黒ずんでくるのは、鉄分とタンニンが酸化するためで、茹でるとき酢を落とすと白くきれいに仕上げることができる。
9月の旬【果物】
【石榴(ざくろ)】旬は秋。ビタミンCを多く含む果実である。果肉は甘酸っぱいが、日本産は欧米産のものより酸味が強いのが特徴。皮が割れ、果肉が見えるくらいのものが食べ頃。生で食べるほか、果汁でシロップを作ることもできる。
【梨】日本梨は盛夏から出回り、新水、幸水、豊水、長十郎、二十世紀、新高と品種を変えて翌年1月頃まで出回る。最近では、甘みの強さと果汁の多さで長十郎をしのぐ、三水といわれる幸水、新水、豊水の人気が高い。西洋梨では、ラ・フランスが西洋梨の中でも最もおいしいといわれている。
【無花果(いちじく)】夏果は6月〜7月、秋果は8月〜10月に出回る。イチジクは薬用効果として整腸作用、血圧降下、健胃、滋養、消化の促進などに効き目があり、二日酔いにも効き目がある。 |
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